2014年09月22日

今泉流振り飛車人生ファイルK 進撃篇

●再々出発
「2度目の三段リーグ終了が決まっても、泣きはしませんでした。勝ち越し延長も何もないので、次に向かって動き出さないといけないな、と。もちろん、応援してくださった方々には申し訳ない気持ちでいっぱいでした」
●証券会社
「退会したのが2008年春。畠山鎮先生のご紹介で、証券会社にお世話になったんです。証券外務員の資格をとって、夏ごろに東京に行って働きはじめました。しかしねぇ、株の世界は厳しいんです。自分は何もできなくて……。3ヵ月で退職しました。畠山先生はじめ、お世話になった方々には感謝しています」
●帰郷
「証券会社を辞めて、冬に広島へ戻りました。次どないしようかなと思っていましたけど、奨励会仲間と職業訓練の学校の話をしたことを思い出しまして。すぐに学校に通って介護の技術を教えてもらい、半年お世話になってから今の会社をご紹介いただきました」
●オムツ交換
「介護の世界もはじめは苦労しました。オムツ交換とか、やったことなかったからね。でも、いまは少し慣れてきて楽しく働かせていただいています。人によって向き不向きが分かれる仕事とは思いますが、自分には合っていた。目上の人に対する敬意を持つのが大切な仕事だと思います」
「介護の仕事はいろいろな形態がありますが、基本的には身の回りのお世話ですね。あとはレクリエーションで楽しく交流したりします。夜勤は月5〜6回かな。認知症の方もいらっしゃいます。1分前に怒っていたひとがニコニコしたり、その逆もあったり。人と接する仕事、マナーと礼儀を大事にするというところは今までの仕事と変わらないと思います」
「ケアをする立場ですが、こちらが教えられることも多いです。高齢者の方の言葉にははっとさせられます。戦争を体験した方も多いので、その当時の話も聞かせていただきますね。一緒に軍歌も歌いますよ(笑)。感動するのは懐が深いこと。こっちが失敗しても、頭をなでなでしてくれますわ」
●女性社会
「あとは、なんといっても職員の方々ですね。女性は偉大です。35過ぎてから学んだいちばん大事なことといっても過言ではない(笑)。男は女性に勝たれへんし、女性が元気だとみんな元気になりますわ。介護の世界は特に女性社会で、職員の9割が女性です。今の職場も自分だけが男。将棋の世界は男性社会やから、その反対やね」
「女性はほんとに細かいところに気づかれるんですね。ぼくのことも最初のころ、黙ってフォローしてくださいました。今もそうなのかもしれへんけど。素直に聞いたらいろいろ教えてくれるし、介護の世界に飛び込んできた自分を育ててくださって感謝しています」
「今回の編入試験にもご理解をいただいて、『頑張ってや、応援してるよ』と励ましてくれますからね」
●感謝
「いまの職場で働くようになってから、変にとがっていた部分が丸くなりました。プライドとかね。その代わりに増えたのが感謝の気持ちです。今まで感謝が足らんかったから、神様が環境を整えてくれたとも思います」
「仕事は楽しい。レクリエーションなんか、こちらが楽しみすぎているんじゃないかと思うぐらい(笑)。大変なこともあるけど、楽しいからこそいまの仕事は続けられています。将棋の結果が出せているのも、その影響が大きいんでしょう。いまは人生を大いに楽しめています」

●序盤の精度
「久々の三段リーグは、昔より序盤の精度が上がって、ウェイトが重くなったと感じました。昔は4枚の居飛穴に組ませてくれたのに、いまは組ませてくれないからね(笑)。ぼくの棋風は変わらなくて、相変わらず序盤が下手(笑)。差がつくと本当に勝てないことを実感するようになりました。もちろん中終盤も大事です。トッププロはそのあたりが滅茶苦茶強いですからね。それでも、勝ちやすさ、勝ちにくさを序盤で意識せざるを得ないところは、はっきり変わりました」
●ネット将棋
「退会になっても、将棋をつづけることは決めていましたよ。一時的に休憩することはあっても、自分は将棋が好きだし、弱くなるのが嫌だったから。アマ大会も一年間の出場制限が明けて、すぐ出場しました。それまではネット将棋をやっていましたね」
●アマ名人
「2011年にアマ名人戦で優勝したのはうれしかったねぇ。新聞に載って、将棋を知らない人からも『凄いね』と言われたし、やっぱり新聞の影響力は大きいですね。このあたりから『思うことの力』を意識するようになり、人生は楽しめば楽しむほど、楽しいことが増えてくると実感するようになりました」
●中飛車党に
「アマチュアに戻って、主軸の戦法を石田流から中飛車に変えました。▲7六歩△8四歩に▲5六歩は指していたけど、初手▲5六歩スタートはアマチュアになってからです。後手番でゴキゲン中飛車をやるのは、半手遅れているような気がするけど、穴熊に組まれるよりマシという感じで自分は指しています」
「ぼくは三間飛車に怖さを感じていたんです。一見主導権を握れるように見えるけど、相手にいろいろ作戦の幅がある。そういう意味では向こうに好きな戦い方を選ばれてしまうので、損だなと思うようになりました」
●相振り飛車
「あとは、何といっても相振り飛車が課題ですね。穴熊好きな自分にとっては、左穴熊の存在が大きかった。もともとその作戦は知っていたけど、三間飛車が苦しいなと思うようになってから本腰をいれて研究するようになりました。左穴熊はもともと小池重明さんも指したことがあって、立命館大学将棋部の櫻井英孝君が体系化し、東大将棋部の小林知直君が勝ちまくった。それでアマチュアで流行するようになったと聞いています。櫻井君は研究がすごくて、菅井流の▲3八銀も彼が発見していたらしいですよ。ぼくが本を書いたときもアドバイスをいただきました」
●夜勤明け対局
「2012年は忙しかったねぇ。朝日オープンと銀河戦の対局、そして『将棋世界』の双竜戦。夜勤明けで大阪や東京に向かい、新幹線で寝てそのまま対局ということも多かったです。双竜戦で戸辺誠先生に左穴熊で勝てたのは自信になったなぁ」

●対プロ戦(段位は当時)
【第38期棋王戦】 豊島将之六段●119手 2012年2月21日
「アマ名人戦優勝のご褒美で出させていただいたのですが、完敗。序盤で悪くなって、そのまま丁寧に指されてだめでした」

【第6回朝日杯将棋オープン戦】牧野光則四段○131手 2012年7月7日

【同】桐山清澄 九段○76手 2012年7月28日

【第21回銀河戦】中座真七段○122手 2012年8月30日

【同】吉田正和四段○127手 2012年8月30日

【第6回朝日杯将棋オープン戦】大石直嗣四段●162手 2012年8月31日
「大石先生に負けたのは悔しい。三段リーグも含めて3連敗や。いつも序盤から差をつけられるんやけど、こっちが中盤で盛り返すんです。でもやっぱり届かない。いちばん悔しい負け方ですわ(笑)」

【第21回銀河戦】牧野光則四段●121手 2012年10月23日

【第26期竜王戦6組】八代弥四段○156手 2012年12月6日
「この将棋に勝ったのはうれしかった。八代四段の勝率が高かったからね」

【同】東和男七段○108手 2013年1月18日

【同】藤森哲也四段○140手 2013年3月15日
「藤森戦は自分好みのわけのわからん玉頭戦やったなぁ。最後は幸運でした。ぼくは勝ったら運、負けたら実力と思うようにしています」

【同】門倉啓太四段●258手 2013年4月30日
「これは序盤から面白かったんです。こっちが初手▲2六歩突いたら、門倉先生が『ひえー』。△3四歩に▲2五歩にも『ひえー』。で、△3三角▲7六歩に△2二銀とバシッと上がられて、今度はこちらが『ヒエー』(笑)。振り飛車党の門倉先生に居飛車を指されて、考えてきたことは全部パーになりました。この将棋も力は出しきれたのに、勝てなかった。入玉模様で点数が足りないのは知っていたけど、なかなか投げきれなかったですね」
「銀河戦の牧野戦、竜王戦の門倉戦は気合が入ってました。なぜなら、勝てばそれぞれの棋戦の最高成績(銀河戦は2勝、竜王戦は3勝)を超えられるからです。突破したい壁やったんやけど、でも突破できなかった。いま思うと、思いが強すぎたかな。力みすぎたり、おびえすぎたり。心を整える術は難しいです」
「竜王戦の中尾戦(2003年)とどちらが悔しいか? そりゃ中尾先生との将棋ですよ。あれは今でもダメージが残っていますもん。思い出したらウッとなります」

【第22回銀河戦】竹内雄悟四段○149手 2013年9月12日

【同】伊奈祐介六段○79手 2013年9月12日

【同】高見泰地四段●125手 2013年10月31日
「伊奈戦に勝ってあと一つ勝てば編入試験。プロの先生相手に意識するのは不遜かなと思ったけど……意識しました(笑)。つぎの高見戦は熱戦になり、強い指し回しで負かされました。自分はもうプロ棋戦に出られないかもしれないなという覚悟もしましたね。アマ大会を抜けるのは本当に大変なんです。加来博洋君もあと1勝まで迫っているけど、同じように苦しい思いでやっているのではないでしょうか」
「将棋は人生のすべてという感じではないし、それはそれという感じやったけど、でもやっぱり決着はつけたいと思っていました。なので、高見戦で編入試験おあずけとなった直後、アマ王将戦で優勝(2013年12月1日。決勝進出2名が銀河戦出場権獲得)したのはうれしかった。すっきりしますからね。朝日アマ名人戦で清水上徹さんに勝てたのも(2014年6月8日。このタイトルでいわゆる「大三冠」達成)、本当に幸運でした」

【第8回朝日杯将棋オープン戦】星野良生四段○146手 2014年7月5日
「実は、星野戦で負けたらもうダメかなとも思っていたんです。銀河戦の対局はあるけど、流れ的に勝てないんじゃないかなってね」
「星野先生との将棋に勝って編入試験の権利を得ますが、この将棋も苦しかった。一応用意してきた順だったんですけど、その局面がもう悪かった。桂損だし、相手の穴熊は堅くてかなり勝ち目が薄い将棋でした」
「その将棋を勝てたのは、応援してくださる方々の姿が目に入ったからやと思います。昔からの知り合いや、facebookで知り合った方々がわざわざ公開対局に足を運んでくださった。そう考えたら、簡単に投げるわけにはいかない。そうやって粘っていたら、いつの間にか難しくなって運よく勝てた。一人で戦っていたら負けていたと思います。応援してくださる方のありがたさを改めて実感しました。本当にありがとうございました」

【同】船江恒平五段○123手 2014年8月1日

【同】小林健二九段○249手 2014年9月3日

【同】長沼洋七段● 194手 2014年9月3日

●編入試験にむけて
「いよいよ始まりますね。決まってから2ヵ月、ほんまにあっという間でした。その間、公式戦にも出させていただいて、いい勉強をさせていただいたと思います」
「いろいろなご縁もありました。高見先生に負けて星野先生に勝てたのも、そういうめぐり合わせを神様がくださったんじゃないかと思うほどです。このブログで応援していただいているのもご縁の賜物ですしね」
「初戦は宮本広志先生。先後が決まっていないので、先後両方の作戦を準備しないといけない大変さはあります。宮本先生はいい方で、モバイル中継でのコメント(9月7日【好局振り返り】藤森哲也四段−宮本広志四段戦)も読みました(※)。うれしかったですね。ぼくも、自分の力を発揮して泥臭い将棋になればなあと思います」
〈※宮本四段のコメント要旨:今泉さんの実力はプロも認めるところ。今泉さんのお気持ちは自分も経験してきたのでよくわかるつもりですが、堂々と戦っていい勝負をしたい〉
「あとは、自分がどういう気持ちで試験を迎えられるかがカギですね。まずはマイナスなことは考えません。意味ないからね。変なことは考えないようにしたいと思います」
「昔ほどは思いつめていないけど、人生が大きく変わるかもしれない、大一番の将棋です。いろいろ思うところはありますが、指す権利があるのはいまのところ私だけなので、まずはそのことに感謝して、この大舞台を楽しみたいと思います」
「モバイル中継、ニコニコ生放送をご覧いただくみなさまが楽しいと思える将棋を指したいと思います。顔晴ります!」
(「今泉流振り飛車人生ファイル」完)


編入試験スタートまでに完結を目指した「人生ファイル」ですが、ギリギリとなってしまいました。
お忙しいなか超ロング・インタビューにお付き合いいただいた今泉さん、ありがとうございます。
いよいよ本番です。みなさん、一層のご声援をよろしくお願い申し上げます。
次回、第1局については約1週間後にご報告する予定です。 事務局


posted by 応援団長 at 10:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今泉さん、顔晴って!ニコ生で応援する。
Posted by 祈!今泉四段 at 2014年09月22日 12:51
広島将棋会館のHPから数ヶ月前にこちらを知りました。
将棋ソフトを作るお手伝いをしているのでいつか
(CPUが)対戦できたらと思っています(笑)

明日応援してます!やっちゃりましょう!
Posted by at 2014年09月22日 15:02
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